「中国市場はもう厳しい」「日本企業は撤退すべきだ」
ここ数年、こうした言葉を耳にする機会は確実に増えました。
一方で、インバウンドの現場や中国人消費者、日中ビジネスの最前線に立つ人たちの声を拾っていくと、必ずしも「需要が消えた」とは言い切れない側面も見えてきます。
変わったのは市場そのものというより、誰が動き、どこにお金が流れ、どんな形で購買が行われているのかという構造です。
今回は、Leeソリューションの水野谷代表に、中国市場の実情、政治的リスク、日本ブランドの現在地、そして中国進出を検討する企業が取るべき現実的な進め方について、率直に話を伺いました。
今の中国市場は「需要が落ちて厳しい」のか、それとも「需要はあるが売れ方が変わった」のか?

Q1. 今の中国市場は「需要が落ちて厳しい」のか、それとも「需要はあるが売れ方が変わった」だけなのでしょうか?

私の感覚としては後者ですね。需要が完全になくなったというより、需要はあるけれど、売れ方が変わって攻略が難しくなっている、という印象です。
特に顕著なのが、「動ける人」と「動きにくい人」がはっきり分かれてきたことです。
個人で行動している方や、外資系企業など国営ではない組織に勤めている方は、政治の影響を受けにくく、今でも比較的自由に日本と中国を行き来しています。
一方で、中国国内の団体、国有企業の役員クラス、公的機関に近い立場の方は、情勢によって行動に制限がかかりやすい。しかも影響は本人だけでなく、家族や親戚にも及ぶため、その分だけ人の動きが一気に減ってしまいます。
ただ、こうした状況は過去にも何度かありました。「もう中国はダメだ」と言われた時期も経験していますが、そのたびに情勢を見ながら緩和されてきた経緯があります。
今後も政治的な流れ次第で、段階的に緩和されていく可能性はあると思っています。
経営の視点で言えば、重要なのは最悪の事態を想定した設計です。中国一本に寄せるのは、今の時代ではどうしてもリスクが高い。
台湾、香港、マカオなど、中国市場に近い代替候補を持っておくことは、回避策として非常に有効だと思います。
高市内閣発足後の日中関係は、2026年のビジネスにどの程度影響するのか?

Q2. 高市内閣発足後の日中関係は、2026年のビジネスにどの程度影響すると思いますか?

これは非常に難しいテーマですが、直近のニュースを見ても、影響は無視できません。
中国はメンツ文化が強く、自国を「大国」として自負している側面があります。そのため、日本側の発言や姿勢を「喧嘩を売られている」と受け取るケースも出てきます。
発言を撤回しない、あるいは強行突破の姿勢が続くと、中国側は制裁を強めてくる方向に動きやすい。これは企業努力でどうにかなる話ではなく、完全に政治の領域です。
最近では、半導体に使われるレアアースの輸出規制が話題になりました。
野村総合研究所の分析では、これが3か月続いた場合、約6,600億円規模の損失になると試算されています。レアアースや資源は、中国が持つ最も強いカードの一つです。
影響はまず観光業など分かりやすい分野から出ますが、最近は工業やサプライチェーンの中核に刺さる形へと移ってきている。企業としては「政治とは距離を置きたい」と思っても、結果的に無関係ではいられない状況だと感じています。
今の中国人消費者は、日本の商品・サービスをどう評価しているのか?


Q3. 実際の所、今の中国人消費者は、日本の商品・サービスをどう評価しているのでしょうか?

今の中国人消費者は、日本の商品やサービスについてかなり理解しています。自国内の商品と比較した上で、選んでいるケースがほとんどです。
品質面では、日本製品が勝っているという認識は依然として強い。ただし、近年は中国国内でも品質が高く、価格を抑えた商品が増えており、そこは軽く見てはいけません。
実際、自動車ではBYD、家電では美的(Midea)がじわじわと存在感を高めています。
化粧品分野では花西子が象徴的で、日本でもオンラインストアやオフライン店舗(GINZA SIX)への展開を進めています。
一方で、日本のモノやサービスに対する不安や不満は、正直ほとんど聞きません。
日本のスタンダードは世界的に見ても高水準です。
行政の視点でも「モノの消費」から「コトの消費」へ移行しており、日本の強みは体験価値の設計にあると思います。
「日本ブランド」というだけで売れる時代は終わったのか?

Q4. それでは、「日本ブランド」というだけで売れる時代は終わったのでしょうか?

日本ブランドが完全に終わったとは思っていません。ただ、モノだけで売れる難易度は確実に上がっています。
だからこそ、これからは「モノ」よりも「コト」が重要になる。
ただ、日本の繊細さや技術力は今でも評価されています。
例えば、TOTOの便座が自然に温かくなる発想や、アルファードの座席の快適性など、使う人の感覚に寄り添う設計は日本企業の強みです。
その機能が必要かどうかは人によりますが、安心・安全、THE 日本ブランドという価値は、今でも根強く残っています。
逆に、今でも勝ちやすい日本企業の共通点は何か?

Q5. 逆に、今でも勝ちやすい日本企業の共通点は何があると思いますか?

共通点は、日本の品質・安全・安心です。これはどのジャンルでも不動です。
特に強いのが、子供向けや身体(美容・健康・衛生)に関わる商品です。
生理用品ではユニ・チャーム、ベビー用品ではピジョンのように、日本基準をクリアした商品は高くても選ばれます。
ホームページを持たない商習慣から、体制面では、受け皿となる公式アカウントが重要です。
基本的に宣伝(認知)はRED、問い合わせや具体的なやり取りはWeChatが前提になります。
中国進出を二択にせず、現実的に進めるにはどうすれば良いのか?


Q6. 最後に、中国進出を二択にせず、現実的に進めるにはどうすれば良いのでしょうか?
中国進出やインバウンドに詳しい社長から、アドバイスをお聞かせ願います。

中国市場は、やるかやらないかではなく、関わり方を設計していく市場だと思います。
自社の需要を見計らうには、まずREDのアカウントを作り、中国ユーザーの反応や現地の要望を見ることが一番安全なスタートです。運用結果を指標にして、販売に進むのか、インバウンド対策を強化するのか判断できます。
需要が消えたわけではなく、政治・経済・消費行動の変化によって、関わり方そのものを再設計する必要が出てきている市場だと言えます。
特にこれから中国進出を検討する企業や個人にとっては、
・いきなり進出・出店を決める
・代理店探しから始める
・まず商品を大量に持ち込む
といった従来型の進め方よりも、RED(小紅書)を活用して需要の温度感を測り、現地の声を拾いながら段階的に判断していく方が、はるかにリスクは低くなります。
実際の運用事例でいうと、レンタル衣装ショップ(個人経営)は「予約」から「来店」までの導線をREDで活用し多くの新規ユーザー獲得を得ています。一方、法人であればブランド認知や商品紹介を行う上で、ユーザーから「どこで買えるのか」「中国で購入できるのか」という声もよく聞きます。これらのデータを定期的に収集し分析することで次ステップへ進む際の大きな判断材料となります。
中国市場は依然として大きく、魅力もありますが、感覚や勢いだけで踏み出すにはリスクが高い市場でもあります。
だからこそ、「今、自社はどの段階にいるのか」「何を目的に中国と関わるのか」を整理した上で進めることが重要です。
中国進出やRED運用で迷ったら、まずは無料相談から
もし、
・中国進出を考えているが、何から始めればいいか分からない
・REDのアカウントは作ったが、運用の方向性に迷っている
・代理店や越境ECを検討しているが判断材料が足りない
・今のやり方が合っているのか、一度整理したい
といった悩みを感じている場合は、一人で抱え込まず、まずは相談してみることをおすすめします。
Leeソリューションでは、中国進出やRED運用に関するご相談を無料で承っています。
商材や事業規模に関わらず、現状を整理し、「今やるべきこと/やらなくていいこと」を一緒に考えるところから対応可能です。
中国市場は、正しく向き合えば、今でも十分にチャンスのある市場です。
大きな決断をする前に、一度立ち止まり、現実的な選択肢を整理するところから始めてみてはいかがでしょうか。

